4月 春の期間限定

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気温が上がるだけでそわそわするのに、期間限定と聞けばすでに居ても立ってもいられなくなる。ここで言う期間限定とは、春のお買い得セールの事ではなく、ここだけ、この時期だけ、ある時間だけなどと言った、ある一定の短い期間だけに出会う事ができる花達の開花情報の事である。

きっと今がアマナの咲く頃だと友人に誘われて、とある田の畦まで散策に出かけた。アマナはユリ科アマナ属で、小さなチューリップのようなとてもかわいらしい花を咲かせる植物だ。そろそろ準備の始まった田んぼ周辺では、すでにカエルが鳴き始め春の様相だ。遠くからはっきりは見えないものの、目を凝らすと畦のあちこちからそのかわいい花達は恥ずかしそうに、でもしっかりとその茎を伸ばして太陽に向かって咲き誇っていた。この春先のわずか数ヶ月間で、葉を出し花を咲かせた後、周りの植物の生長と共に草の中に埋もれ、初夏には地上部分は跡形もなく消え、次の早春まで地下部分でひっそりと育つ。これらカタクリやニリンソウなども同様、春先限定で現れるその短い命を儚んで「スプリング・エフェメラル」と呼ぶそうだ。そう友人に聞いて、その言葉の響きといい、期間限定感といい、目の前に広がるアマナ達がさらに愛おしい存在になった。

自宅の庭では暖かくなったせいで、今まで小さく目立たなかったカタバミやハコベ、オランダミミナグサが急成長を遂げ繁茂していた。カタバミの広がりすぎてしまった地下茎をたどり、取りきれないだろうとなかば諦めながらも黙々と草取りに励む。こんもりと小さな山のように積まれた雑草達を眺めてふと、彼らこそエフェメラルであればいいのにと思った。だがしかし、春だけ現れた後、跡形もなく消えてしまうようなかわいい植物であれば、私にせっせと抜かれる事もなくもっと大事にされるであろうし、なによりも雑草という名のくくりには決して入らないだろう。私の雑草除去作業は続くのである。